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第11話 閉鎖空間に閉じ込めて
パナードの説明が始まる。
「私たち、魔法を使う者を総称し『魔法氏』と呼びますわ。『魔法氏』はより厳密に4つの呼び方で分けられております。魔法の力を授かり、1年未満の者を『魔枯子』。1年以上が経過した者を『魔景仕』。カーヤがこれに該当いたしますわ。『魔景仕』であり、なおかつ『魔導志』と契約が許された者を『魔法術士』。私がそうです。そして、大老様に三角房における功績が認められた者のみが成れる『魔法氏』の最高位、『魔幻充師』ですわ」
パナードは淡々と伝える。
「そして今回、あなた様は魔導志として、魔景仕であるカーヤが魔法術士になるための契約をするためにここ三角房に来られたわけですわ」
「ちょっと待ってくれ!」
パナードの説明を巡が遮る。
「そもそもそこからわかんないんだけど、俺がその魔導志?って言うのが全くピンと来てなくて…」
巡の言うことももっともである。
これまで17年間、魔法との縁と言えば画面越しなどで見るような完全に空想の産物であり、まったくもって関係すらなかったのだから。
「俺、魔法だって使えたことないし、そりゃ憧れはあったけど…」
「それは当たり前のことなのです」
パナードは続ける。
「魔導志に魔法を使うことはできませんわ。そもそも魔導志になられた方に共通して言えることは、誰一人として自分が魔導志であると自覚されていないということなのです」
「え?」
巡は唐突にそう言われ、戸惑うばかりであった。
「魔導志の方々は、ある日突然、自分でも気づかぬ間に魔導の力を得るのです。そして、カーヤと契約できる魔導志は世界であなた一人しかいないのですわ」
「世界で…俺だけ?」
次々と飛び出す情報に、巡は混乱するばかりであった。
「でもでも!それはおかしいよ!だって…俺がたまたま変なところに迷い込んだのをカーヤちゃんがたまたま助けてくれただけで…」
「本当にたまたまだと思う?」
カーヤが唐突に喋りだす。
「あんたが魔導志だって、確証があったわけじゃないわ。でも、ほんの少しでもその可能性があったから、あんたをあの閉鎖空間に閉じ込めて私が助ければ、無条件でここに連れてこれると思ったのよ」
カーヤはそう言った。
―…閉鎖空間に閉じ込めて?
巡の思考は、さっきまでとは比べ物にならないほどぐるぐると回る。
「え?じゃあちょっと待って。あの変な場所に俺が迷い込んだのって偶然じゃなくて…カーヤちゃんの仕業?」
「そうよ」
「で、俺を助けてくれたのもカーヤちゃん?」
「そうでしょ」
「そんでそんで。助けてあげたんだからって俺をここに連れてきたのもカーヤちゃん?」
「何さっきから当たり前のこと言ってんのよ。そうよ!」
巡の頭の中で、一つスッキリしたことがあった。
『と、とにかく麻道巡!あんたをここから出してあげるわ!』
―そういえばあの時、俺の名前を確かに言ってたなぁ。あの時はスルー気味になってたけど…今考えてみたら、あらかじめ俺のこと知らないとありえないよなぁ…。
流れる雲を見つめながら巡はそんなことを考えた。
「この計画的拉致犯がっ!!」
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