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第15話 フランクにいこうよ
開けられた蓋の中を巡が覗くと、そこには地下に続く薄暗い階段があった。
「この階段を進めば、大老様のおられる場所へ繋がりますわ」
パナードはそう言ったあと、一歩下がり頭を下げた。
「それでは、【颯魔】様。それにカーヤ。お二人に至福がありますことを」
「え?パナードさんは?」
「私がご案内できるのはここまでですわ。契約の場にはお二人しかいけませんの。お二人ならきっと大丈夫」
パナードの言葉を聞き、カーヤが巡の袖をつかむ。
「もたもたしてないで…早く行くわよ」
「…怖いの?」
巡がそう聞くと、カーヤは顔を赤くする。
「なっ…!?そんなわけないでしょ!あんたがビビり散らさないように、しょうがないから私がくっ付いてあげてるのよ!感謝しなさいよね!!」
はいはいと、巡は頷き、パナードの方を振り返る。
「じゃあ、行ってきます」
パナードは何も言わず頭を下げる。
巡とカーヤは地下の階段をゆっくりと降りていく。
「きっと大丈夫…」
パナードが呟いたその言葉を、巡が聞くことはなかった。
階段を進むと、壁に点々と設置されたロウソクで、かろうじて足元が見えるほどの暗闇になっていく。
相変わらず、巡の袖をつかむカーヤの手が小刻みに震えているのを巡は感じていた。
数分歩くと、広場のような開かれた場所にたどり着いた。
しかし、明かりはなくロウソクも先ほどの階段に比べ少ない。より闇に近い闇だった。
「なぁ。ホントにここであってるのか?」
巡がカーヤに聞くと、別の声が返答してきた。
「あぁ。ここであってるよ。颯」
その言葉と共に、広場の明かりが急に点いた。
突然の眩しさに、巡とカーヤは目をつぶる。
「ははは、ごめんね悪いね。驚かすのが大好きなもんでね」
巡がゆっくりと目を開けると、そこは円形の広場。何もない。椅子もテーブルも、壁にも飾りなどはなく広いだけのただの空間。さらに声の主の姿もなかった。
―あれ?
「あー、下だよ下」
そう言われ、視線を少し下げるとそこには一人の男が地面に胡坐をかいて巡たちを見上げていた。
「うわぁっ!?」
巡はカーヤと共に、驚き後ろに下がる。
「ははは、そうそう。そういう驚いた顔が大好きなんだわ」
―この人が…大老…?
巡は、本当にこの男が神と等しいほどの人物かと疑った。というのも無理はない。
だらしなく伸ばした銀髪の髪で、前が見えているのかもわからないほどに目が隠れている。身なりも、もともとは真っ白であったであろう着物が茶色く薄汚れところどころ破れほつれているものを着ている。
「ははは、初めましてだね。颯とカーヤ・エヴェル・トラーラちゃん」
ゆっくりと立ちながら、大老はそう言った。
大老が立ち上がり、初めて気づいたが身長は190センチ近いであろう長身だった。
下に向いていた巡とカーヤの目線は、今度は上に移動する。
巡は固唾を飲む。
「あ、あなたが…魔法の始祖…。大老様ですか?」
「ちょっと!」
意を決した巡の言葉をカーヤは止める。
「あんた、なに勝手に話しかけてるのよ!わきまえなさいよ!」
「いや、だって」
巡を制止するカーヤに大老は笑う。
「ははは。そんなかしこまらなくていいよ。カーヤ・エヴェル・トラーラちゃん。フランクにいこうよ」
大老は壁の方に歩き出し、もたれかかる。
「始祖とか元祖だとか、聞こえはいいけどさ。言っちゃえばプロトタイプさ。僕はただ魔法を広めただけ。それを色んな用途に活用できるように進化させてきたのはまた別の人たちなんだよ。その人たちを差し置いて大老様なんて大袈裟な名前で呼ばれるようになって、正直心苦しいのが本音なんだよ」
大老のその言葉に、巡は返す。
「そ、それは違うと思います…」
「あんた!」
カーヤが巡の袖を引っ張り止めようとするが、巡は言葉を続けた。
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