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第17話 魂を賭けられるかい?
「聞こえているかい?契約をしにここまで来たんだろう?」
再び発せられた大老の言葉に、巡とカーヤは鳥肌が止まらない。
―なんだ!?ただ喋ってるだけなのに…この嫌な感じ…!
大老からの問いかけに、しばしの間を置き、カーヤが答えた。
「は…、はい!私とこの【颯魔】は、契約を結ぶため…ここへやってきました!!」
「そーかいそーかい。カーヤ・エヴェル・トラーラ。それはご苦労様だったねぇ」
冷たい瞳でそう伝える大老。
「それで?颯。君は、その契約に同意なのかな?」
―さっきから…気になっていた。なんでこの人は、俺を颯と呼ぶ…?
巡は、体に走る異質な雰囲気に耐えながら、そんなことを考える。
―…でも、今は…そんなのどうでもいい…!
巡は声を大にして伝える。
「はい!俺もこの魔景仕、カーヤを魔法術士にするための契約をします!」
巡の質問に、大老はフッと小さく笑った。
「そっか。じゃあ2つ君に質問させてくれ」
「……はい」
巡は固唾を飲み、返事をすると大老は続けた。
「颯…。君はこの魔法の世界に身を投じることで、命を脅かす危険があったとしても契約を承諾できるかい?魂を賭けられるかい?」
今までとは比べ物にならないほどの、大老からの圧に巡は足がすくみ、思わずその場に座り込んでしまった。
カーヤが巡の横で肩に手を置き、声をかけるが、巡は大老の視線から目を離すことができなかった。
「なぁ?どうだい?その少女のわがままを聞いてしまったがために、命を落とす結果になったとしても、君は笑って『これでよかった』と言って死ねるかい?」
畳みかける大老。
大老の問いかけに、巡の思考は乱され、様々なことが頭を廻る。
―死ぬ?命を落とす?魔法で?契約するだけで?危険なこと?カーヤちゃんはそんなこと一言も言っていなかった。パナードさんも。俺は騙されてここにいる?大老様の言っていることが正しい?あれ?契約ってなんだ?そんなことしてどうなる?俺は何しにここへ来た?魔法の世界?なんだそれ?俺は今どこにいる?なんだここ?ここはどこだ?俺は…。あれ?俺って誰だ?
巡の考えは、支離滅裂を極めていた。自分の存在さえ曖昧になり、頭での処理が追い付かない。何もかもわけがわからないそんな混沌とした思考の世界に巡は落ちていっていた。
その時。
「いい加減、目を覚ましなさいっ!!!」
『バシッッ!!』
思考の渦に沈む巡を引き止めたのは、涙目になりながら、必死に叫び振るわれたカーヤの平手打ちだった。
その瞬間、巡は自分の過去の記憶がフラッシュバックした。
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