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第2話 人間の世界じゃないから
屋根の上に座る少女は、屋根からバッと飛び降りた。
普通の人間なら足を折ってもおかしくないその高さから、少女は優雅に着地して見せた。
驚く巡をよそに、少女は語り掛ける。
「困ってるんなら助けてあげようかって」
中学生のような童顔の容姿。髪は白髪に毛先のみ緑がかったショートヘアで前髪を一部、羽の形をしたピンクのヘアピンで留めている。真っ黒のローブを纏い、両足を開き、腰に手を置いたポーズで巡の前に立った。
「え?あ、はい。じゃあお願い…します…」
突然訪れた不気味な住宅街でこれまた突然現れた少女に、巡は言われるがままイエスと答えた。
「あっそ。そこまで言うなら助けてあげるわ」
少女は鼻高々にそう言った。
―え?何この状況。
巡には何がなにやらさっぱりだった。
「まず最初にいっとくけど。ここ、人間の世界じゃないから」
少女は唐突にそんな言葉を言った。
「人間の世界じゃ…ない?」
巡は耳に入った言葉をそのまま繰り返す。
「そっ。この道は、元いた世界とすごく似てるけど時間の概念も空間の概念も存在しない無に等しい世界ってわけ」
要点だけを説明され、一般的で平均的で平凡的な人間がこれを理解できるわけもない。
しかし、巡は常識的ではなかった。
「つまり…俺は何かのきっかけで人間世界と似て非なるこのパラレルワールドに迷い込んじゃって時間も進まないし同じ道を永遠ループするこの場所に閉じ込められちゃってるってことか。それで普通の手順じゃここから抜け出せないから、君がここから抜け出せる正しいやり方を教えてくれるってことでいいんだよね?」
完全に世の理から外れた今の状況を即座に理解し、要約しまとめ言葉で伝えるなど、まさしく常識的ではない。
少女もこれには目を丸くした。
「あんた…なんでこの状況理解したうえで、そんな冷静でいられるのよ」
「いや、理解したわけでも冷静なわけでもないよ。ただ、『不思議な世界に迷い込んで謎の少女に助けられる』ってパターンは2000年代後期のラノベの流行りだったから傾向がわかりやすいっていうか」
「…なんて?」
幼少の頃よりアニメや漫画、ライトノベルなど二次元の世界にのめり込んでいた巡にはこの状況は幾度となく脳内妄想を繰り広げてきた状況だったのだ。
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