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第21話 愛していく
ようやく笑いが収まった大老が、巡に言う。
「じゃあ、もう一つの質問ね。正直、この質問の方が重要なんだ」
巡はそれを聞き、深呼吸をした。
「な、なんですか?」
「颯。君は…、その魔景仕、カーヤ・エヴェル・トラーラを愛しているかい?」
「………………えっ?」
予想だにしなかった質問に固まる巡。
「あの…その質問は…?」
「ん?言葉の通りだよ」
「それって…ガチな質問ですか?それともおふざけというか…」
「何を言っているんだい。僕はいつだってガチだよ。ガチガチだよ。あ、今の別に変な意味じゃないからね。ははは」
またしても笑う大老。先ほどまで圧を放っていた人物とは到底思えなかった。
―なんなんだこの人…。
「で、どうなんだい?心から愛しているかい?これから自分が契約するその魔景仕を」
巡は考える。
そして、答える。
「…愛しているかと聞かれれば…。愛していないです」
そう巡は言った。はっきりと言葉で。『愛していない』と。
それを黙ってカーヤは聞いていた。
「愛していない、と…。それはこれから運命を共にするパートナーとして致命的じゃないのかい?」
大老は再びそう聞いた。
それに対しても巡は答える。
「ただの現状です。もしかしたら、この場では嘘でも『愛している』と言った方がいいのかもとも考えました。でもそれこそ、これから契約するっていうカーヤちゃんに失礼だと思いました。正直、さっき逢ったばかりの女の子です。素性も性格も深いところなんて何も知りません。それで愛せって方が無理な話だし、さっきも言ったように失礼です。ただ一つ言えるのは、今は愛していなくても、これから愛していくことはできると思っています。これからこの子と、カーヤちゃんと一緒にいることでそれは育っていくと思います。それが『友愛』なのか『親愛』なのか『純愛』なのか『敬愛』なのかはわからないけれども、たしかに芽生えていくと確信しています」
巡は真っ直ぐ大老を見つめ、そう言った。
「…合格だね」
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