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第5話 後半に回収されるタイプのやつ
頷く巡を見て、カーヤはゴシゴシと涙を拭い、先ほどと同じ腰に両手を置くポーズで話し出す。
「しょ、しょうがないわね!教えてあげるわ!魔法氏とは一体何なのか!」
―切り替え早いな…。
「さっきも言ったけど私は八弦の内の風弦の魔法氏なの!」
「はいストップ」
巡がカーヤの話を遮る。
「まずはその八弦ってのを説明させてもらっても?」
カーヤはニヤリと笑う。
「そんなに私に興味があるの?しょうがないわね!教えてあげるわよ!」
―おそらく常にマウントを取っていたい性格なんだろうな。あと『しょうがないわね!』が口癖みたいだな。
冷静にカーヤを分析する巡。
「魔法氏と言ってもそれぞれ使える魔法の得意不得意があるの。それを大きく8つに分けてそれぞれの魔法氏は分類されるの。火弦、水弦、地弦、明弦、廻弦、憂弦、無弦。そして私が風弦ってわけよ!」
「はー、なるほど。念能力とか全集中とかそんな感じか…」
妙に納得する巡。カーヤはそれを無視し、話を続ける。
「前まではもう一つ弦があって、九弦だったらしいんだけど、その弦があまりにも希少でその弦を扱える魔法氏がいなくなったから八弦になったみたい」
「後半に回収されるタイプのやつだな」
「あんたさっきから何をブツブツ言ってんの?」
巡の独り言にカーヤが突っかかる。
「あ、ごめん。なんか新作アニメの展開聞いてるみたいになっちゃってつい」
「知らないわよ、そんなの」
呆れるカーヤ。
「ていうか、魔法氏ってそんなにいるの?」
「そうね。一般社会に溶け込んでいるだけでも1000人くらいはいると思うわ」
「おー、結構いる」
巡は感心し、再び別の質問をぶつける。
「魔法氏って生まれた時からそうなの?それとも普通の人間が能力を授かる系なの?」
「あんた、意外に的確な質問するわね」
「まぁ、伊逹にフィクションの世界にのめり込んでるわけじゃないからさ」
謎のドヤ顔を見せる巡に一瞬曇った顔を見せたカーヤは答える。
「答えは後者。普通の人間が…魔法の力を授かるのよ」
そうなのかと相槌を打つ巡。
「それは…なにか妖精みたいなのと契約するとか、なにか条件を満たせば魔法氏になれるとかそんな感じ?」
「…。まぁ、条件を満たせば…」
徐々に声のトーンが低くなるカーヤだったが、巡は止まらず質問を続けた。
「その条件って何なの?ファンタジー好きの俺としてはめちゃくちゃ気になるんだけど!もしかして、俺も魔法氏になれちゃったりする!?」
「っ…!!」
期待に胸を膨らませ体を前のめりにし、巡がこの質問を投げかけた途端、急にカーヤの顔は、初めて見るような形相に変わった。
「あんたにそんなこと関係ないでしょっ!?軽い気持ちで、冗談でもそんなこと口にしないでっ!!!」
突然の怒号に巡は驚く。カーヤも取り乱した自分自身に驚き、ハッとする。
「あ、いやっ…。なんでもない。忘れて…」
魔法氏になるために、満たさねばならない条件。
それに触れてしまったことでカーヤは怒ったのだと、巡はすぐに理解した。
気まずそうに目線を反らしながらも、重たい口調でカーヤは言葉を発する。
「ま…魔法氏になるには…」
と、そこで巡が掌をカーヤに見せる形で右手を前に出した。
「いや!言わなくていい!というか…ごめん。つい、熱くなって質問ばっかりしちゃって。多分、聞いちゃいけないこと聞いたんだよな?俺…。たしかに、他人に踏み入られたくないこととか軽々しく言われたら嫌なことだってあるよな。だから言わなくていい!ほんと不躾だった!」
頭を下げる巡。
「べ、別に…」
内心、なんの事情も知らない巡に対し、唐突に怒鳴ってしまったことに対して申し訳なさを感じていたのはカーヤの方だった。
「…ふん!あっそ!!そこまで言うなら、許してやるわよ!しょうがないわね!」
先ほどまでの調子に戻ったカーヤ。
「あぁ、ありがと」
顔を上げ、安堵の表情を見せる巡。
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