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第6話 御意
「しょうがないから許してあげる…けど!!」
カーヤはそう言って巡に、ビッと人差し指を向ける。
「その代わり!私の頼みを1つ聞きなさい!」
「へっ?」
「もしくは、助けてあげるんだからそのお礼に私の頼みを聞きなさい!!」
巡は首を傾げる。
「その頼みっていうのは…?」
カーヤはそう尋ねる巡の頭を、派手な音は鳴るが、さほど痛くはない絶妙な強さで叩いた。
「痛っ…!」
正直痛くはないが、反射的にそう口走る巡。
「質問ばっかりでしょうがなくめんどくさい奴ね!!それはここから出てから教えるから!今あんたがするべきことは頼みを聞くか?という私の質問に『イエス』か『はい』、もしくは『御意』で答えるいずれかしかないのよ!」
「ちょっと待て。一個だけ忍者みたいな返事が混ざってるんだが…。ん?というか全部頼みを聞くしか選択肢がねぇじゃねぇか!」
「いちいちうるっさいわね!ほら早く!答えて!」
取り付く島もないカーヤの捲くし立てに、巡は渋々答えを出す。
「………………御意…」
巡の回答に、カーヤは笑みを浮かべ満足そうに頷く。
「よし!それでいいのよ。じゃあ助けてあげる」
―マジでなんなんだこの子…。いや、こいつ。
泣いたり怒ったり、強制したり。
カーヤの意図が全く見えない巡だった。
カーヤは唐突に真剣な顔になり、両手を広げ目を閉じた。
―なんだ?突然…。これがここから出るために必要なのか?
常識的ではない巡の読みは正しかった。
―ちょっとへんちくりんなポーズだけど、、【マジパテ】のためならしょうがない。
そう思いながら、巡も両手を広げ、目を閉じた。
「あんたはやらなくていいのよ」
カーヤに冷たくそう言われ、巡はゆっくりと目を開き両手を下ろした。
すると、カーヤの体が淡く白い光を放ち始めた。
「えっ?」
徐々にその光は、直視できないほどの眩い光に変わっていった。
巡は手で目を覆う。
そして、光は徐々に弱まり消えていった。
「はい、もういいわよ」
少女の言葉に、巡は目を塞いでいた手を退けた。
「あっ…。いつもの帰り道」
巡はそう呟いた。
そこは見知らぬ住宅地ではなく、巡がいつも登下校をしている道だったからだ。
「ほらね、ちゃんと戻ってこれたでしょ!」
得意げな顔でカーヤはそう言った。
「すげぇなぁ…魔法…」
巡は無意識にそんな言葉を口にしていた。
「じゃ!今度はあんたが私の頼みを聞く番よ!」
「あ、はい…」
小さく頷いた巡に、カーヤはそっと右手を出した。
「ん?」
その右手を、首を傾げ見つめる巡に対し、カーヤは言う。
「私と一緒に三角房に来てちょうだい!」
「………………はい?」
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