第7話 薄紅色の空

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第7話 薄紅色の空

 「バミューダって…?」  「三角房(バミューダ)は、魔法氏の拠点となる異世界空間。そこでほとんどの魔法氏は生活しているわ」  「そこに…俺がなぜ?」  質問をする巡の手を、カーヤはグッと引っ張る。  「もう!相変わらず質問が多いわね!いいから一緒に来なさい!」  「え?えっ?今?…俺、家帰って【マジパテ】見ないと…」  巡の言葉を無視し、カーヤは巡の手を握った右手とは逆の左手を空に向けた。  「風来図(ふうらいず)」  それが呪文だったようだ。カーヤがその言葉を唱えた途端、巡は意識が遠のくのを感じた。  『どうしたの?一人?』  ―なんだ?  『迷子なの?お父さんとお母さんは?』  ―あ、これ、俺の声だ…。  『俺が一緒に探してあげるよ!だから泣くなよ!』  ―なんだ?誰に言ってる?  『もう泣くなって。俺は強い女の子が好きだぞ』  頭の中に流れ込んでくる、自分が誰かに話しかける声に、巡は覚えがあるようなないよう…。いつのことだったのか、誰に言ったのか、どこであったことか、すべてが記憶の中でふわふわとしたものだった。  そして、巡は意識を取り戻した。  目を開けると、辺りはまた見知らぬ街並みだった。否、見知らぬのは街並みだけではなかった。空は薄紅色に怪しく続き、建物までも異様に建ち並び、明らかに日本、もとより人間世界ではないことを如実に物語っていた。  そんな光景に立ち尽くす巡の横で、なぜか飛び跳ねながら喜ぶカーヤがいた。  「やった!やったぁ!やっぱり()()()()()んだっ!」  笑顔でそう言いながらカーヤは落ち着きのないように動き回る。巡にはなんのことやらさっぱりわからなかった。  「なんでそんな喜んでんの?」  巡はカーヤに問う。  しかし、カーヤから返答が来ることはなく相変わらず喜びはしゃいでいる。  ―謎の場所に迷い込んで、魔法氏の少女に助けられたと思ったら、こんなわけのわからない世界に連れてこられて…。俺はいつ【マジパテ】見返せるんだろうか…。  三角房(バミューダ)と呼ばれる、現実世界と非なる魔法の世界に連れてこられながらも、巡は冷静にそんなことを考えていた、見慣れない三角房(バミューダ)の薄紅色の空を眺めて。  この二人が出逢い、共に三角房(バミューダ)に来たことは、すぐさま()()()()の知るところになった…。  「へぇ、もう連れてきちゃったんだ。早く会いたいよ………(はやて)…」  ()()()は不敵に笑った。
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