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約束を破った理由は?
帰りの車の中――。
私は、助手席でうとうとと微睡む健悟に、ずっと気になっていたことを聞いてみる。
「健悟?そう言えば、君、どうして昨夜は部屋にいなかったんだい?」
すると、
「んー……?これ。先輩が持ってるって聞いたからさ。貰って来た」
眠い所に話し掛けられた為か、やや不機嫌そうな声を出す健悟。
次いで、彼はズボンのポケットから何かを取り出すと、此方に向けて放り投げてくる。
「危ないな」
慌ててキャッチする私。
受け取った物を見た瞬間、私は思わず驚きの声を上げた。
「これっ……!」
それは以前、私が人生で1度は吸ってみたいと話していたーー世界で最高級と謳われている煙草だったのである。
「……君、覚えていてくれたのか……」
けれど、当の健悟は既に夢の中で、答えてくれる様子もない。
私は、そんな幼馴染みの様子に苦笑いを浮かべると、早速その最高級煙草を1本咥え、火をつけてみる。
心なしか、今まで吸ったどの煙草より美味いと感じたのは……きっと、気のせいではないだろう。
「昔から今まで、私は君に世話になってばかりだな」
煙草の煙と一緒に、少しだけ、ずっと心の奥で感じていた気持ちが零れ出る。
それが聞こえたのか……猫の様に眠る幼馴染みは、柔らかく微笑んだ気がした。
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