ひとめぼれ

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5、その晩、家で焼きそばを食べていた大樹と彰。レイチェルのことばかり考えていた大樹は頭の中でどこか現実離れした世界へと足を運んでいた。「大樹どないしてん?」正和が気遣うように聞いた。「大樹君?」由紀子も心配の眼差しを向ける。「あっいやなんでもないない。」現実へと戻った大樹は頭を振りながら答えた。「何かあってんやろ?」彰がにやっとした。「別に。」  クイズ番組を見ていた由紀子。一緒に問題の答えを考えたいのかといえばそうでもない。ただ見ていたいだけなのだ。こんな番組などと正和はいつも馬鹿にしていた。魚介類を混ぜたソース焼きそばは誰の口にも合う。これにお好みを焼けば関西人としていうことなしだ。祖父母とのだんらんのひと時であるにもかかわらず、大樹は落ち着かない気分でいた。レイチェルのことをもっと知りたい。一緒にいたい。心の底から湧き上がってくるこの気持ちは何だろう。  明日会った時にどういう話をしよう?大人な話を聞くのも悪くはない。年が離れている分、学びになることがたくさんある。食べて遊んで夢の中へ入るくらいなら早く次の朝が来てほしい。2階の窓からHANNAを見つめる大樹。オレンジや黄緑などの照明が店を明るくしていた。  
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