makoto 1

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オレのことバカにしてるだろ? そう思って少し睨むと、オレの横でも当麻が驚いた顔をしている。 ・・・当麻、お前もか。 何だか、ちょっと複雑な気持ちになる。 でも目の前ではノアがキラキラの笑顔で、キラキラの目でオレを見ている。 『マコト、すごくキレイ。お人形さんみたい』 は?何言ってんだか。 『キレイなのはノアだろ?絵に描かれてる天使みたいだよ』 『えー。僕は全然だよ』 いやいや、その顔でそんなこと言ったらただの嫌味になるから。 そう思って口を開きかけた時、奥さんの方が先に口を開いた。 「どちらもキレイよ。こんな美人の二人にお店をやってもらえるなんて、なんて幸せなのかしら」 そう言って少女のように胸の前で手を合わせる奥さんに、オレは何も言えなくなってしまう。 まあ、奥さんがそう言うのならいいか。 そんなことを思っていると当麻も英語での自己紹介を終え、奥さんはマスターが待っているからと帰ってしまった。そして残った拓真は当麻と仕事の話を始めたので、オレはコーヒーを淹れにカウンターへと向かう。するとそこへノアもついてきた。 『そばで見ててもいいですか?』 『いいよ。おいで』 そう言えばここの手伝いをするって言ってたっけ。悪阻もほとんど治まってきてオレ一人でも大丈夫になってはきたけど、子供が生まれたらしばらくはお店に立てなくなる。その間はまたマスターと奥さんにお願いしなくちゃいけないけど、ノアが代わりに出来るようになればすごく助かる。 それに今後を考えると発情期は定期的にくるし、2人体制でお互いの発情期をカバーし合えれば、それが一番いい。 そう思ってオレは、マスターが教えてくれたようにひとつひとつ解説しながらコーヒーを淹れていく。それを興味深そうに見つめるノア。 なんか可愛いな。 オレは一人っ子だったけど、弟がいたらこんな感じなのかもしれない。 なんだかちょっと心がふわふわする。 『3つでいいんですか?』 オレがカップを並べてコーヒーを注いでいると、その数にノアが質問する。 『オレは飲まないからこれでいいんだよ』 そう言いながらオレはグラスを出して、そこにグレープフルーツジュースを注ぐ。 本当はメニューにはないのだけど、どうしてもオレが飲みたくて今だけメニューに加わっているのだ。 まあ、あれだよね。妊娠中の嗜好の変化。オレはとにかく柑橘系、それもグレープフルーツに取り憑かれている。 そんなオレを不思議そうにノアが見るから、オレはまだ全然目立たないお腹をさすった。 『こいつがいるから、カフェインはダメなんだ』 するとノアはびっくりした顔をしてお腹を見る。 『赤ちゃん?』 『うん』 オレがうなずくと、ノアがぱあっと顔を輝かせる。 『おめでとうございます。いつごろ生まれるんですか?』 『秋だよ』 そう言うと、ノアが羨ましそうにオレのお腹を見る。 『いいなぁ』 『ノアも欲しいの?』 あまりに真剣な眼差しに思わず訊いてみると、ノアは恥ずかしそうに小さく頷いた。 その顔のなんと可愛いこと。 ああ、本当に拓真には勿体ないくらい可愛くていい子だ。だけど蓼食う虫も好き好き。ノアは拓真が大好きなのだ。 『ノアのところにもすぐ来てくれるよ。赤ちゃん』 そう言ってやると、ノアはものすごくうれしそうな顔した。 さて、せっかく淹れたのでコーヒーを当麻たちのところに持っていくと、仕事の話は終わっていた。 オレは当麻と拓真の前にコーヒーを置き、オレとノアのもそれぞれの隣に置いた。仕事の話が終わったのなら、一緒に座ってもいいだろう。 そう思ってオレとノアも席に着くと、当麻が話の内容を教えてくれた。どうやら拓真たちは、祖父母であるマスターたちの家にしばらく2人で住み、その後もこの町に住むらしいのだ。
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