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それを学んだオレは、再びノアがオレの腕の中に戻って来てくれてからというもの、出来るだけ言葉にして伝えようとしている。
番になった今ではお互いの思いをある程度分かるようにはなっているが、それでも完全ではない。もう二度とノアを悲しませないためにも、出来るだけ言葉にしようと思っている。
思いも乗せて言ったオレの言葉に、ノアはその大きな目を潤ませて涙を溢れさせる。
「僕も・・・僕もタクマを愛してます。今日も・・・こんなに凄いお部屋を用意してくれて、ありがとうございます」
頬を染めて涙を溢れさせながらそう微笑むノアは、だれよりも綺麗だ。
そんなノアにオレも微笑み、オレはノアに口付けをする。
ノアの香りに酔いそうだ。
ノアから溢れる香りは発情期のために甘くて濃ゆい。その香りから、もうすぐ本格的に発情期に入ることが分かる。抱きしめる華奢な身体も更に熱を帯び始めて、重なる唇から漏れる吐息も熱い。
「ノア、先に寝室に行っておいで。オレは軽く食べられるものを用意してから行くから」
意識が飛ぶ前に何か食べさせた方がいいと、ノアを先に寝室に行かせてオレは内線で軽食を頼む。そして程なくして届いたそれを手にオレも寝室へと向った。
「ノア?今のうちに少しお腹に入れた方がいい」
ベッドに横になっているノアにそう声をかけると、先程よりも潤んでとろんとした目がオレを振り返る。呼吸が少し荒いけど、まだ本格的にはなっていない。
そんなノアを起き上がらせて後ろから抱き抱えるようにオレも座ると、先程届いたサンドイッチを口の前に運んでやる。するとぱくんと小さく食むノア。
まるで幼子にごはんを食べさせるようにノアにサンドイッチを食べさせ、合間に自分も食べる。そうしているうちに身体の熱はどんどん上がり、わずかに震え出してくる。その変化にオレはノアをベッドに横たえ沈めると、唇を深く合わせた。
本格的に発情期に入ったのだ。
少し触れただけでも敏感に感じて声を漏らすノアの服を優しく脱がしてやり、既にしとどに濡れた後孔へと指を這わす。そしてその解れ具合を確かめるようにそっと指を挿れる。
発情期のオメガにとって、前戯は却って辛い思いをさせてしまうことになる。この時のオメガは本能に支配されるため、早くアルファと繋がり、その精を欲するのだ。そのためにそれ以外の行為は結果焦らされることになり、その辛さに身を震わすことになるのだ。
もっとかわいがってあげたいけど、それはアルファのエゴだ。
そう思って、既に柔らかく解れて濡れそぼっているそこを確認したオレはいったん指を抜き、ベッドサイドを見る。するとそこにあるはずのものがない。サンドイッチを置いた時に落としたのかと下を見るがそこにもない。
そういえばここにはじめから何も無かったと思い、引き出しの中かと開けてみるも入ってない。
発情期のための部屋なのにないのはおかしい。
そう思っている間もノアは発情期のために苦しげに喘いでいる。その姿に早くしなければと焦るも、ものがない。
オレは仕方なく自前のものを取り出そうと、いつもそれを忍ばせている財布から取り出すが、その思いもよらない姿に唖然とする。
オレが探しているのはゴムだ。
そして当然あるはずのベッドのそばにはなく、自前のものはなんと、真ん中にバチンとホッチキスが留まっている。それも予備の分にまで・・・。
「ノア・・・」
オレは、もう限界とばかりに身を震わせて必死にオレを待っているノアを見る。
「・・・ぁ・・・ん・・・っ」
激しい発情でオレを待つノアに、すぐに与えてやりたいが・・・。
ゴムを隠したのはノアだ。おそらく軽食を用意する間に寝室のゴムをどこかに隠したんだろう。それからオレの財布のも・・・。
「ノア。どこに隠したんだ?」
早く楽にしてやりたい。
そう思いながら訊くけれど、ノアは首を横に振る。
「その・・・まま・・・がいい・・・」
上がる息と喘ぎを堪えて声を絞り出すノア。
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