makoto 1

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makoto 1

想像もしていなかった当麻との番と妊娠、そして結婚と、生活の何もかもが変わってからしばらくして、拓真が突然番を連れてきた。 毎日のように喫茶店に通っていた拓真がぱったり来なくなり、どうしたのだろう?とは思っていた。だけどオレはまだ悪阻が残り、あまり他のことまで気を回すことが出来なくて、拓真のことは気にはなっていたものの後回しにしてしまっていた。だって何かあったら当麻なり奥さんなりが言ってくれると思ったから。でも誰も何も言わなかったので、何か用でもあるのだろうと単純に思っていたら、拓真が突然キレイな子を連れて店に現れた。 その子は本当にキレイな子で、まるで天使のようだった。 柔らかい金色の巻き毛に真っ白い肌、そして真っ青な目はくりくりと大きい。ひと目でオメガと分かるその端正な顔立ちは、まるで絵画の天使の様だった。 こんな子、本当にいるんだ・・・。 そのキレイさは、一瞬我を忘れて見とれてしまう程だった。 閉店後に奥さんが拓真と共にその子を連れてきたのだけれど、既にアメリカで番届と婚姻届を提出して正真正銘拓真のパートナーとして来日したのだそうだ。 こんな子が拓真のパートナーなんて。 拓真が実はとても優しい人だということは分かっているのだけれど何分最初の印象が悪く、こんなキレイで大人しそうな子が拓真と一緒になって本当に大丈夫なのかと心配になってしまう。 でもその子が向ける拓真への優しい眼差しと思いが、拓真への深い愛情を示している。拓真もまたその子を大事にしているのが見て分かり、二人が深く愛し合っていることがオレからも見て取れた。 なんだ。 ちゃんと大事な人がいたんだ。 オレは以前、拓真にうなじを噛んで欲しいとお願いしてしまったことがあるけど、本当に噛まれなくて良かった。 あやうく関係を複雑にさせるところだった。 でもあの時はそんな子がいるなんて全然知らなかったし、その後もそんなこと言ってなかった・・・。当麻とは仲がいいけれど、オレとはあまり親しくないから言わなかっただけかもしれない。 まあオレにはよく分からないけど、とにかく拓真がアメリカから番を連れて帰ってきたのだ。だけどそのことを誰にも言ってなかったらしく、マスターも奥さんも突然現れた孫の番に驚いたらしい。 「本当に何も言わずに連れてくるから驚いたわよ」 とため息混じりで言うものの、その顔は嬉しそうだ。 こんなキレイでかわいい孫嫁は、やっぱり嬉しいのだろう。奥さんはにこにこ上機嫌だ。その横で、ちょっと照れながらも拓真がその子の紹介をする。 「オレの番でノアだ。日本は初めてで日本語も出来ないけど、ここの手伝いをしてもらうことになってるからよろしく頼む」 けれど紹介されたノアは、何やらぽやっとオレを見ているだけだ。拓真が日本語で紹介したから分からなかったのかもしれない。 『はじめまして、ノア。オレは真琴だよ。いまはここでマスター代理をさせてもらってるんだ。これから一緒にここで働くんだね。よろしく頼むよ』 右手を差し出しながら英語でそう言うと、ノアの顔がぱっと明るくなって、眩しい笑顔を向けながらオレの手を握った。 『ノアです。マコト、これからよろしくお願いします』 慣れない国で慣れない言語に囲まれて、きっとノアは緊張していたんだろう。オレが英語を話したことにすごくほっとした顔をしている。だけど、その周りの反応は・・・。 「真琴・・・英語話せたんだ」 ものすごく驚き顔の拓真。 「・・・オレだって英語ぐらい話せるけど?」 奥さんの手前、不機嫌に怒ることも出来ず笑顔でそう返すけど、ちょっと頬が引きつってしまう。
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