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「隠してるつもりは本当になかったんだ。ごめんな」
そんなにショックを受ける当麻に、オレの方が驚きだ。
そんな予想外な展開もあったけど、とりあえずノアの紹介も終わり、2人は帰っていった。だけどまだ当麻の機嫌がいまいち治らない。
「そんなにショックだった?」
ベッドに入ってからも口数が少ない当麻にそう言いながら、オレは当麻に擦り寄った。すると当麻もオレを抱きしめてくれる。
オレの悪阻とまだ安定期前と言うことで夜のスキンシップは控えているのだ。なので毎晩こうしてくっついて寝るのが最近のオレたちのスタイル。
「うん。真琴のことは全部知っていたい」
そう言って当麻がオレの頭に頬をすりすりさせる。
「だけど当麻だって、オレに全部を話してないだろ?」
生い立ちや親のことなんて、お互い教え合ったりしていない。実際オレは当麻がどんな子供時代を送ったのかとか、ご両親が何をしているのかとか全く知らない。
「そうだけど・・・じゃあ今から教え合おうよ」
そう提案してくるけど、オレはお前の過去の女性遍歴とか聞きたくないぞ。
「全部知らなくたってオレは当麻を愛してるよ。それに少しずつ知っていった方が、その度に新鮮な気持ちになっていいだろ?」
そう言ってオレは当麻を見る。
「当麻と出会ってからのオレにはもう隠し事はないよ。それじゃダメ?」
すると当麻は、まだ少し納得のいかない顔をしつつもオレにちゅっとキスをした。
「うん。それでいいよ」
そんな当麻の胸にオレは顔を埋める。
過去なんてどうでもいいんだ。
いまこの瞬間、愛しい人のそばにいられれば。
オレは大好きな当麻の香りを思い切り吸い、目を閉じる。
そんなオレの頭に当麻がキスを落とした。
この当たり前の日常の幸せを感じながら、オレは今日も大好きな人の腕の中で眠りに落ちていく。
了
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