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三年目、七月一日
初めて彼女と、喧嘩した。
その日は雲一つない青空が広がる快晴で、風も吹き、熱いくらいの日差しが、ひんやりと肌寒い病室に差し込んでいた。
「いらないって言ったじゃん!」
彼女の声が響き、遅れて病室が、シン、と静まり返った。
ぎゅっと握りしめた腕の中の花が、苦しそうに歪む。
なんで、と、聞き返せば、彼女はキッと俺を睨んだ。
「なんでって、私、この夏外に出れないんだよ?」
なのに持ってきて、と目を細めた。
瞬間光が何かを反射して、彼女は顔をそむける。
「……君が、羨ましくて憎いよ」
「――失礼しまーす」
看護師さんがちょうど病室に入ってきて、検査だから、と彼女は車いすに乗って出ていった。
最後まで、俺の顔なんてみてくれないまま……。
それでも花束は、サイドテーブルに置いてきた。
元気に咲いていたはずのひまわりは、儚げに花びらを落とす。
……夏が、早く去ればいいのに。
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