四年目、十月三十一日

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四年目、十月三十一日

ハロウィンパーティーに彼女と参加した。 病院内がささやかに飾られて、小児科の子供たちが仮装をする。 彼女は子たちが集まるロビーで、他の患者さんたちと一緒に遊んでいる。 だが、しばらくして盛大に負けたらしく、早々に観戦側へと移った。 「やっぱり子どもたちには勝てないね」 トランプを使っているところは、すでに仮装した子どもたちに占領されていた。 確かに、とうなずき、彼女の膝にブランケットをかける。 ずいぶん盛り上がってきた頃、お菓子を抱えた看護師さんがやってきた。 ゲームに夢中だったはずの彼らは、すぐお菓子に飛びつく。 ――トリックオアトリート! 元気な声が響いた。 「いいな……」 彼女の声は小さく、鼓膜を震わせる。 ふと、ポケットに忍ばせていたチョコを握った。 「え、何? くれるの?」 うなずく。彼女は一層目を輝かせて、ふふっと笑った。 「ありがと」 またゲームを始めた子どもたちを見た。 混ざりに行く? と聞いてみるが、彼女は首を横に振る。 「せっかく君がいるんだから、もう少しだけ話してたい」 ほんの少し赤らめた顔を向けられて、ぐっとくちびるを噛んだ。 高ぶりすぎた想いは、血の味がした。
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