七年目、四月一日

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七年目、四月一日

いつの間にか、こんなにも時間が経ったんだ、と彼女は笑う。 俺も、あっという間だったな、って返す。 空も青く、ほどよく温かい、うす桃色の花が咲いた春の朝。 彼女は相変わらず白い病室のベッドに座り、俺はその横に丸椅子を置いて座ってる。 今日、俺たちのこの関係に終止符を打つ。 七年は、あっという間に過ぎ去った。俺は毎日のように日記を付けては泣いて、彼女はそれを笑っていた。 色んなことがあった。イベントではしゃいだし、たまにある外出の後は熱出して心配もした。怒って、喧嘩になって、仲直りして、また泣いて。 いつまでもぬぐえない不安に駆られて、眠れない日もあった。 ただただ疲れて眠り続ける日もあった。 それでも俺たちはここまで来た。 もう、いいんじゃないかって……思うようになった。 「……じゃあ、書くよ」 確認するように俺を見て、彼女は言う。 うなずけば、そっとペンを走らせる白い指先。 ――[白崎杏菜]。 「よし」 ペンを置いて、満足げに呟くと、それを掲げた。 俺の名前と、新たに書かれた、彼女の名前が、窓から差し込む光を反射する。 「……もう、後戻りなんてできないね」 彼女が俺を見て、いたずらに笑った。 なんて幸せなんだろうか。 「…………ありがとう、杏菜」 ポタリ、と落ちる水滴。彼女は少し困ったように眉を寄せながらも、俺の手を握ってくれた。 今日から俺は、彼女と家族になる。 きっとずっと、彼女を思い続けると、約束しよう。 だから神様……どうか、彼女を俺から奪わないでください。 少しでも長く、傍に居させてください。 ――月島修。
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