田島という存在

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田島という存在

 田島には、病気の母がいます。しかも免疫不全ですので、何時危篤になっても不思議ではありません。田島が悪い、訳ではありません。不幸にも遺伝してしまったのです。しかし今では薬で、発症を抑えることができます。必ずしも田島が、田島の母のようになってしまう訳ではないのです。 田島は母の入院費用と、自身の薬のために懸命に働いています。父は遠くの昔に、母を見捨てたのでしょう。田島自身、自分の父が誰であるのかを知らないのです。そのような環境で育った田島は、自然と男色が強くなりました。ハッテン場を訪れては男と犯ります。繰り返しです。  田島はその道では恐れられていましたし、尊敬されていました。誰も田島に手を出せないのです。そのはずでしたが、例外が一人だけいました。それが田中です。彼は田島の表の部分のみを見て裏の面を一切見ていませんでした。だからこそ田島と関係を持てました。しかしやはり田島は、田中から離れていきました。  田島「母さん。」  ホスピスの無菌室の中にいる母さんと面会しました。田島の母親はホスピスから出ることはできません。しかし田島のお陰でお金には不自由はしませんでした。  「良い息子さんを持ったね。」  他の似たような境遇の患者さんは、田島の母だけではありませんでした。母がいつか治ると信じて、田島はバイトを掛け持ちして治療費を稼ぎます。そのかいもあってすぐに亡くなるような、ことはありませんでした。宣言されていた余命よりは長く生きています。田島の母はそんな息子が誇らしかったです。  しかし田島は、その期待にこたえるごとに、心を病んでいきました。  「田島さんは頼りになるね。」  今日もパート先で、田島を励まします。言葉が掛けられます。その男を田島は巧みに誘い犯させます。そして何事もないように振る舞うのです。 とある市場、田島はここでも働いています。
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