41人が本棚に入れています
本棚に追加
ファーストクラスに入ると、そこにはCAが三名集まっていて、通路の両側のシートに二名の男性が横たわっている。その姿を見て驚いた。
「えっ? もしかしてこの二名はパイロットですか?」
チーフパーサーが答えてくれる。
「はい。でも二名でなく、もう一名。予備の機長もそちらに」
彼女が指さす先を見ると、もう一人のパイロットも横たわっている。
「分かりました。診させて頂きますね」
私は手前の一人の頸動脈を触ったが脈が振れない。呼吸も止まっている様だ。目を開くと瞳孔が散大しているし対光反射もない。
「死亡されている様です」
私の言葉に周りのCA達から悲鳴が上がる。続けて他の二人も確認したが同様だった。
「どうして、こんなことに?」
「分かりません。操縦席から呼び出しが有って中に入ると、機長と副操縦士が苦しんでいて、直ぐに休憩室の予備の機長を呼びに行ったのですが、同様に苦しんでいらっしゃって。そのまま三人をファーストクラスの空席に運んで寝かせたのですが、数分で三人とも動かなくなって……」
「他にパイロットは?」
「いえ、この三人だけです」
「じゃあ操縦出来る人は?」
「居ません。今は自動操縦で飛んでいるだけです」
「何てこと……。機内で他のパイロットを探さないと……。呼び出せますか?」
チーフパーサーは少し躊躇している様だった。
「お客様が不安に思われるかもしれませんが、仕方無いですね……」
そう言うと彼女はマイクの所に走りアナウンスを始めた。
最初のコメントを投稿しよう!