ドクターコール

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 ファーストクラスに入ると、そこにはCA(客室乗務員)が三名集まっていて、通路の両側のシートに二名の男性が横たわっている。その姿を見て驚いた。 「えっ? もしかしてこの二名はパイロットですか?」  チーフパーサーが答えてくれる。 「はい。でも二名でなく、もう一名。予備の機長もそちらに」  彼女が指さす先を見ると、もう一人のパイロットも横たわっている。 「分かりました。診させて頂きますね」  私は手前の一人の頸動脈を触ったが脈が振れない。呼吸も止まっている様だ。目を開くと瞳孔が散大しているし対光反射もない。 「死亡されている様です」  私の言葉に周りのCA(客室乗務員)達から悲鳴が上がる。続けて他の二人も確認したが同様だった。 「どうして、こんなことに?」 「分かりません。操縦席(コックピット)から呼び出し(コール)が有って中に入ると、機長と副操縦士が苦しんでいて、直ぐに休憩室(クルーレスト)の予備の機長を呼びに行ったのですが、同様に苦しんでいらっしゃって。そのまま三人をファーストクラスの空席に運んで寝かせたのですが、数分で三人とも動かなくなって……」 「他にパイロットは?」 「いえ、この三人だけです」 「じゃあ操縦出来る人は?」 「居ません。今は自動操縦で飛んでいるだけです」 「何てこと……。機内で他のパイロットを探さないと……。呼び出せますか?」  チーフパーサーは少し躊躇している様だった。 「お客様が不安に思われるかもしれませんが、仕方無いですね……」  そう言うと彼女はマイクの所に走りアナウンスを始めた。
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