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「それで、その……色気を引き出すとは、具体的に何を……?」
念のためか、他の店員の目を考慮して、普段は瑞季、副店長の朔也、主任の涼華の三名が使用しているという、三階の休憩室にお邪魔している現在。
入ってパチリと電気を付けると、そこにはまるで、巨大なウォークインクローゼットのような空間が広がっていた。
中央のテーブル以外、周囲のクローゼットは全てダークブラウン。天井の白と相まって、そのシックな配色が眩しすぎず落ち着く。
掛かっている服のほとんどが、瑞季がモデル時代に購入したり、衣装として着た物をメーカーから譲られたものらしい。
うわぁ……凄い……と、思わず感嘆の息を漏らした香心だったが、本題を忘れないうちにと、慌てて彼を振り返って尋ねたのだった。
すると、背後でカチャリと扉の鍵を閉めた瑞季は、クローゼットのうち、比較的、服が少ない場所まで歩み寄り、それらをシャッと左右に避けた。そして――。
「おいで」
トントンとクローゼットの段を軽く叩きつつ、自身も空いているそこへ腰掛ける。
香心はギクシャクと歩み寄ると、なんとか隣に座ったのだが――。
――こ、こんな狭い空間に二人きりなんて……何か起こる予感しかしないっ……!
内心では、何故かあの日の添い寝以上に緊張していた。
そして実際、その予感は的中した。
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