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はあ、疲れた。今すぐにでも横になって眠ってしまいたい。体も心もくたくたで今なら一度も目を覚ますことなく二十時間は眠れてしまいそうだ。疲れが取れるのかは知らないが。
「さっき帰ってきたばかりなのにもう行くのかい?」
「うん」
「軽くだけどご飯を用意したから食べてからにしたら?」
「そうしたいけど時間なくてさ、この茶碗のご飯だけおにぎりにして持っていくよ」
「そう……。体には気を付けてね」
「母さんもね」
外は真っ暗だ。今日は特に空が曇っていたから尚更にそう感じる。そんな中、なさけなく道を照らす街灯の下を歩き、いつものコンビニへと向かう。
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ。ご飯はちゃんと食べてきた?」
「いえ、時間がなかったので」
「廃棄のやつもあるから少し食べな?もう少しいるから」
「すみません」
廃棄になっていたパンをかじり、買ったコーヒーを願いを込めてのどに流し込む。途中で寝てしまわないように。
「じゃあ、お疲れ。頑張ってね」
「はい、お疲れ様です」
今日はどのくらい眠ったっけ?間違いなく言えるのは今日は一度も横になっていない。横にはなっていないが昼休憩に仮眠は取っていたはずだ。
「いらっしゃいませ」
絞り出すように声を出し、空元気で体を動かす。
つらい、きつい、やめたい。そんな言葉を何度押し殺したことだろう。こんな思いをしないといけないのにもちゃんと理由がある。母さんもきっと俺と同じような日々を送っている。俺だけ投げ出すわけにはいかない。
「いらっしゃいませ」
それに、この体がちゃんと動く限りは。
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