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俺は橋村に尋ねた。
「危険人物って、具体的に誰だ?」
橋村は真剣な顔で小さく頷いてから話し始める。
「この学園には生徒会と風紀委員という二つの権力があるんだ。そして、生徒会と風紀委員生徒は同じくらいの権力があって、すこぶる仲が悪い。けれど、生徒はどちらかのグループに入ることを強制されていて、中立することは望ましくないんだ。二年生は風紀委員の支持者が多いけど、鷹野は生徒会を支持していたと思う。だから風紀委員には気をつけろ。」
な、なんだそれ。常に誰かと競い合わなければならないということか。
「どうして派閥があるんだ?」
「あ~、それはわかんねぇ。けれど、生徒会に所属してる人はヤバい奴しかいないぜ。」
「ヤバい奴?」
尋ねると、橋村は鼻で笑った。
「まず、この学園の生徒会っていうのは、全校生徒の抱かれたいランキングと抱きたいランキングの上位者から選抜されて成立している。」
「は、はぁ!?」
呆れた。学校の大切な責任者の一人が、全てふざけた選挙から選ばれているだなんて。
「それだけじゃねぇ。教師も真面目な人がほとんどいないから、誰も止められないんだ。そのうえ、生徒会に与えられた権限というのは強固すぎるから、理事長でしか生徒会に圧をかけることができないんだ。」
そんな制度で学校が成り立っているなんておかしい。生徒より権限がない教師だなんて、それは教師とは言い切れないような気がするし。
というか、理事長はどうしてこんなにも不思議な制度を許可しているのだろうか。さっさと廃止してしまえば良いのに。
いや、待てよ。理事長は俺にセクハラしてくるような人だ。まさか理事長はこの制度を後押ししているとでも言うのか? もしそうならば、かなり問題だろう。
まぁ良いか。俺一人が変な制度だと喚いたところで、きっと何も変わらないだろうし。俺が生徒会の人達に近づかなければ良いだけだろうし。
「そうなのか。ありがとう、教えてくれて。」
改めて感謝を告げると、橋村は子供っぽい笑みを浮かべてコクリと頷いた。
「当然だってば。まぁまぁ、そんなことは置いといて。学園を案内しよっか。」
「あぁ、頼む。」
橋村はさっと話を切り上げると、わずかにほくそ笑む。それから俺達は校舎の中の方へと歩みを進めた。
恐ろしい人物がそれなりにいるこの学園ではあるが、敷地も広大だし、良い施設であるのには変わりないのだろう。探索するのが非常に楽しみである。
などと考えていると、橋村の小さな独り言が聞こえてきた。
「──へへ、これで俺の腐男子生活も充実するぜ…」
怪しい引き笑いと共に発せられる、不思議な言動。…聞かなかったことにしよう。
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