第一話 ここはどこ?

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「いや、いやいやいや! 保健体育の授業って…不吉すぎるんですけど!?」  絶対、授業ではなく実技だろ。ほら、上野先生は今すぐシタいと言いたそうな顔してるし。本当に色魔だな、この人。 「大丈夫。何も恥ずかしいことじゃないよ。むしろ、こういうのには慣れていかないと。」  上野先生は息を荒くさせながら、ピンクエッグという名のローターを手に待つ。そして俺に見せびらかした。 「ほら、自分で触ってごらん。」 「い、嫌です!」  隣にいた理事長は俺に距離をつめると、興味深そうにローターのスイッチの部分を持つ。そしてまじまじと見つめた。 「私が子供の時にもあったが、いつ見ても変わらないデザインだな。」  理事長はちょっとだけ顔を赤らめている。  待て、おかしいだろ。変態男といい、この二人といい、この学校には変態しかいないのだろうか。上野先生と理事長はマシ、と思って油断していた自分が憎い。 「これはね、お尻に入れるとすごく気持ち良いんだよ。」  はぁはぁと息を早めながら説明する上野先生。正直、背筋が凍りつく思いになる。 「け、結構です!」  俺は必死になって言ったのだが、上野先生には届かなかったらしい。上野先生はローターの振動する部分を持ったまま、俺の胸元に近づけてくる。一応抵抗の構えはしていたのだが、尻ではなく胸? と思って油断してしまった。いや、尻ではないことがせめてもの救いなのだが。  上野先生は俺のYシャツにローターを当てると、スルリとブレザーの中を滑っていく。そして、ある位置でピタリと止まった。  す、凄い。この人、一発で俺の乳首の位置を当てた。…って感心している場合じゃなくて、これはマズいんじゃないのか!?  俺は人生で彼女ができたことはあるけれど、夜を共にする関係までには発展しなかった。つまり童貞で終わってしまったということである。それなのに男に乳首を弄られるだなんて…虚しすぎる。  それにもちろん、俺は今まで尻や乳首には手を出したことがない。俺だけでなく、きっとほとんどの男性がそうだろうけど。  上野先生は俺の乳首にローターをずっと押し付けてくる。俺は上野先生の手を引き離そうと努力しているのだが、なかなか離れない。  すると突然、乳首に電流が走ったような感覚がした。 「うっ、ひゃあ!?」  さっきまでは少し痒いだけだったのに、いきなり快楽に変わって困惑する。な、何これ。チクチクするというか、ビリビリするというか。ローターは大きな振動音を鳴らしながら揺れていた。  ちらりと隣を見ると、やっぱり理事長がスイッチを押したようだった。俺の反応を見て楽しんでいる様子である。上野先生は理事長に話しかけた。 「理事長、『弱』なんですね。」 「まずは『弱』からいかないとな。」  は? これで『弱』なのか? 『強』にしたら俺、死んでしまうんじゃ…ではなく、生徒にセクハラするなんて、最低ー! 「はっ、…っふ、ん…うあ…」  俺はがっしりと上野先生の腕を掴んで抵抗している。自分の気持ち悪い声が出てくる口を真っ先にふさぎたいが、上野先生から手を離すと今度は尻に突っ込まれそうだったので、できるだけ我慢することにした。こういうことは、せめて、最高にクールなドS系の美女にされたかった。  上野先生はシャツの上からローターで擦る。それがなんとも気持ち良い。ふと俺の股間に目をやると、見事に勃起していた。クソ、まさか俺がこんなので勃つだなんて。  上野先生も俺の股間の様子に気が付いたらしい、不吉な笑みでニヤニヤと笑っていた。 「おや、悪い生徒ですねぇ。」  誰のせいだよ! と突っ込みたくなったが、ここは我慢。大人の対応をするべきだ。 「ちょっと、う…上野先生! これ、やっ、やめてください…んっ、」  俺がギロリと睨んだのが効いたのか、上野先生はようやく俺の気持ちを理解すると、スッとローターを離した。離れた瞬間、俺はソファーに深くもたれて息を懸命に整える。理事長はスイッチを切ったようだった。 「鷹野君、下の方は処理するかい?」  俺の股間をじっと見つめていた理事長が話しかけた。変態が隣に二人もいるのに、するわけねぇだろ。 「しません。自然に落ち着きます。」  俺がそう言うと、二人は少し残念そうな顔をした。…。  どうして!? 俺、常識的な発言しかしていないよね!? やっぱりこの学校には変態しかいないのか!  少し嫌な気持ちになっていると、今度は上野先生がとても真面目な顔になって唸っていた。さっきまでいやらしい顔をしていたくせに、どうしてそんなに表情筋が自由なんだ? 「理事長、おそらく鷹野君はあの時代の子ですよね。」  上野先生はとても真面目な顔で理事長に話しかける。理事長も同じように、とても真面目な顔で頷いた。 「そのようだね。」  な、なんだ? いったい、何があるというのだろう。俺は思わず緊張してしまい、ゴクリと唾を飲み込んだ。
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