可哀想な子

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昨日父が死んだ。 突然病院から家に電話がかかってきたのだ。 交通事故だった。熱中症でふらついて横断歩道に出てしまい、トラックに轢かれそうになった中学生を庇ったそうだ。その子は私と同じように陽に焼けて少し色素の抜けた髪を高く結んでいて、 後ろ姿が私に似ていたそうだ。 そんなの私には関係ない。 大方心の優しい父のことだから私と重なって、若くして死んだ娘を見た親が自分が代わりになればよかったのにと思うだろうとと考えたのだろう。 でも、生憎その子は私ではないし、死んだのは結局私の父だ。その子は軽い擦過傷で済み、私は父を亡くした。 私は顔も見たことのないその子がどうなろうと関係ないのだ。 私に似たその子のためだけに死んで欲しくはなかったけど恨みで殺されるよりはよっぽどかっこいい死に方だと思う。 厨二病的な考えすぎるだろうか。 でも、私は優等生にならなくてはならない。「可哀想な子」とか「お父さんいないらしいよ」なんていう声を跳ね除けないといけない。 人助けをして死んだ父を私以外の誰かが悪く言っていいはずがないのだ。何も言わせないようにするには優等生になって誰からも文句を言わせなければいいだけの話なのだ。
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