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物思いにふけりそうになった時、ピーッとレンジからあたため終了の音がして私はお弁当を二つ抱えると狭い真四角のテーブルにコトンと置いた。
「尚樹、食べよ」
「おう、腹へったな。毎度毎度気付けばこの時間だしな」
「だね」
私達は暗黙の了解で二人で一人用の炬燵に入ってコンビニで買ったお弁当を食べ始める。
時間はいつも23時だ。仕事柄、夜ご飯と言えるのかはわからないけど、この時間に食べる味気ないコンビニ弁当でも尚樹となら豪華なイタリアンレストランのディナーよりも私は嬉しい。
炬燵の中で寒がりの私から、尚樹の足をちょんと蹴ると私の足先を温めるように、尚樹が足の裏を重ねる。
「尚樹の足ってあったかいね」
「美夜のが冷たすぎんの」
「あ、だんだん尚樹の足冷たくなってたかも」
「だな。足の感覚なくなってきたわ、凍死するかもな」
「もうっ、大袈裟」
顔を見合わせて笑う。人工的な炬燵の熱よりじんわり伝わる尚樹の体温が心地よくて心まであったかくなる。
「あ、美夜。一個ちょうだい」
そういうと尚樹は、海苔弁当の私からあっという間に卵焼きを取り上げた。
「一個って、一個しかないじゃん」
不貞腐れる私を見ながら、尚樹は自分のハンバーグ弁当からポテトサラダのカップを差し出す。
「これやる。美夜が好きなやつ」
「尚樹が嫌いなだけじゃん」
「あはは。だいぶ俺のことわかるようになったじゃん」
「ばか」
「ばかで結構」
「もうー……」
私の拗ねた顔を眺めながら形のいい唇で口角を上げる、尚樹の意地悪く自信に満ちたこの顔が私は好きだった。
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