二章

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 ※  パズルのピースは順調に減っていった。  時に桜の花びらに触れ、蒼穹の欠片を集め、草木の緑に癒され、そして飛翔の体を組み上げて。  ただの無秩序な情報でしかなかったピースに意味をもたせ、目指すべき形へ嵌めていく作業は小説作りと似ているなと思った。  伝えるべきテーマがあって、脳内に点在する言葉や表現を集めて、ピースを嵌めるように正しい文章をしたためて、絵柄が合わなければやり直して──。  たったの数分が苦痛だった過去に比べ、今は一時間なぞ一瞬にして過ぎ去った。 両手で(すく)っても溢れるほどにあったピースは片手で掬える程度になり、ここまでくれば、後は脳内で自動的に描かれる完成図に沿ってピースを嵌めていくだけだった。  ──異変に気付いたのは、秀斗の掌から最後の一ピースが離れたときだった。  秀斗はパズルの箱を確認し、ピースの袋を点検し、床やベッドの下を覗いてから、呆気に取られて呟いた。
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