二章

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 3  飛翔が入院していた総合病院は、高空家から車で二十分ほど走らせた閑静な立地に建っている。  四月も過ぎれば満開だった桜も葉桜に変容し、久しく訪れた秀斗は裏寂しさを感じずにはいられなかった。  四季森さんはいるかな……。  堤防沿いを歩きながら秀斗は首を巡らせる。  結局、パズルの外枠と飛翔の顔を埋めるピースは郵送されてこなかった。 糊を塗れないのでは折角組み上げたパズルをうっかり崩してしまう恐れがあり、あれから数日が経った現在もテーブルの上に鎮座している。  元々は執筆用のノートパソコン置き場でもあったので、早めの対策が求められていた。 し、作品を本当の意味で完成させるためにも、写真家の彼女には会わなければならない。  秀斗は涼やかな風を肌で切りながら堤防沿いや病院の周辺を散々歩き回ってみたが、四季森舞花らしき女性の人影はついぞ見つけることができなかった。 無闇に探すのでは(らち)が明かず、このままでは四輪車を停めたコインパーキングの料金もかさんでしまう。  ほどなくして捜索を適当なところで切り上げた秀斗は、 「こうなったら仕方あるまい」  スマホで『四季森舞花』名前と検索してみた。 ダメで元々のつもりだったが、豈図(あにはか)らんや『シキモリ写真館』なるサイトを発見した。  そこに飛んでページ下部に記された住所を確認したところ、病院からそう遠くない商店街の一角で居を構えていることが判明した。
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