二章

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 秀斗は早速四輪車を走らせて、数分後には『シキモリ写真館』の前に降り立っていた。  商店街自体も数十年の(おもむき)を感じさせる雰囲気ではあったが、『シキモリ写真館』だけはまるで数百年の時を超えて現れたかのように、レトロモダンな外観とオーラを纏っていた。 「お邪魔しまぁす……」  緊張に胸を詰まらせながら弁柄(べんがら)色の重たい扉を開けたところ、カランカランと軽くて透き通るベルの音が静かな館内に響いた。  学校の教室ほどの空間は物が少ないせいか広々とし、天井から吊り下がる涙形ランプから放たれる淡い橙の明かりが、秀斗に古色蒼然(こしょくそうぜん)な感を打たせる。 館内の四方を囲むウッドタイルの壁には自然を切り取った写真が飾られており、そのうちの数枚を観察して秀斗は確信を得た。  ──あのパズルと同じだ。 「いらっしゃいませ──あっ」  正面入口右手のカウンター奥から出てきた紺色エプロン姿の女性は、まさしく四季森舞花であった。  光を吸い込んで離さない黒髪と、雪のように白い肌がコントラストとして際立っている。 彼女は秀斗の姿を認めると「お久しぶりです」と微笑んだ。 「えっと、お客様は高空……」 「秀斗です。 この間は弟の飛翔を撮ってくださりありがとうございました」 「いえいえ、こちらこそありがとうございました。 それで、私のアート写真は楽しんでいただけましたか」 「その件ですが。 今日は御礼を兼ねて一つ伺いたいことがありまして。 あの写真もといパズルは、外枠が無いというので正解なんですか?」
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