二章

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 完成か否か悩んでいた時期をあっさり飛び越えて、舞花は「はい」と頷いた。 そして壁に掛かった同じ作風のアート写真を眺めながら、自身の想いを委ねるようにして続けた。 「一見してあれは未完成のように見えますが、アート作品という観点では完成されているのです」 「なる、ほど? 未完成だけど完成されている……」 「日本語って難しいですよね」舞花は柳眉を八の字にして苦笑を漏らした。 「私のアート写真──パズルのコンセプトは、端的に言えば “未来への願い” なんです」  カウンターから出た舞花はカウンターの正面壁に掛かる一組のカップルを映した──どちらも顔のピースが無い──パズルに歩み寄って小さな掌で示し、澄んだ黒瞳(こくどう)を細めた。 「パズルというのは外枠と中身を合わせて初めて完成となりますが、完成してしまうとなんですよ。 これって、とても悲しくはありませんか」 「ああ、まあ……仰ることはなんとなくわかります」 「ありがとうございます。 ──なので私は、敢えて外枠を無くした未完成のパズルを完成と位置付けることで、絵柄に広がりをもたせたわけです。 そもそも、世界に外枠なんてありませんし」
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