三章

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 飛翔が再び一人暮らしを始めてから数日が経っていた。 高空家の玄関を、眩い朝日に歓迎されながら出て行った弟の背中は今も瞼の裏に残っている。 印象的であったというより、日が浅いから記憶に新しいというのが正しい。 『元気にやってるよ。 そっちはどうなんだ。』 『オレは心配いらないよ。 このメッセージも、短い休憩の合間に送信してるし。』 『休めよ。 また転ぶぞ。』 『転ぶのは人生だけでいいさ。 オレはまだまだ現役。』 『うるさい。 早く仕事に戻れ。』 『わかった。 兄ちゃんの様子が知れただけでもオッケーだから。』  スマホ越しに飛翔の屈託ない笑みが透けて見えた。  秀斗は興を削がれた感は否めなかったが、弟が順調に復帰している様は応援してやりたい。 それが不甲斐ない兄としての贖罪(しょくざい)から来る感慨だったとしてもだ。  スマホをジーンズのポケットに戻した秀斗は、くっと背中を伸ばして晴れ渡る空に視線を投げた。  次の小説のモチーフは、『自然』だ。
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