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秀斗はしばらく天井を眺め、作品完結の余韻に浸る。 力無く持ち上げた手のひらは勝鬨を堪えるように震えていた。
「やってやったぞ……最高の作品だ」
文字通り、身を燃え尽くす想いで成し遂げたのだ。
舞花と出逢って “自然” とまともに向き合わなければ、決して書くことの叶わなかった物語。 自然をモチーフにすることで、どこまでも走っていけるような爽快感が常に傍らにあった。
ピコン、とスマホの通知音が鳴った。
秀斗は仰臥のまま指を這わせ、スマホを掴む。 タップした液晶画面には、メッセージアプリの通知と『飛翔』の文字が並んでいた。
飛翔からのメッセージは、彼女を連れて来たその日から反応を返していなかった。 執筆作業で忙しいからと自分に言い訳し、弟の近況報告を知ることを避けてきたのだ。
あれから二ヶ月弱が過ぎている。
身を起こしてアプリを開くと、飛翔の近況報告に加えて秀斗の日常を窺う文面がずらりと並んでいた。 絵文字の無い文章はさしずめ短編小説のようで、読む気力がまったく湧かなかった。
今はまだ、完結させた作品の余韻に浸っていたいのだ。
秀斗は既読だけ付けるとアプリを閉じ、再び寝転がった。
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