雨という二人舞台に雪の雫を

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 意識が覚醒すると今度はスノードロップの花束をもって事件現場らしき場所の近くにいた。マスコミがまるでハイエナのように群がるところをすり抜け近くによると、自分が最も愛し、自分を捨てた男が仰向けで倒れていた。その手にはスノードロップの花が一輪、握られていた。  あまりのセンスのなさに思わず乾いた笑いが漏れた。自分を捨てた男の終幕がこれだなんて。まるで、希望をつかみ損ねて死んだ男みたいではないか。芝居だったら終われない展開ではないか。それを自分の最期に持ってくるなんて。  ただ、センスはないが花を添えてやろうと思いスノードロップの花束を投げ入れた。もう、花言葉の意味はなくなってしまったが、無いよりましだろうと思ったからだ。  ふわっと風が吹き、意識が完全に途切れ、自分が消える気配がした。
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