不倫だけは、絶対に

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「文也に限ってそれはないな」 はっきりと断言してしまうと、翔子との夫婦格差が浮き彫りになるけど、本音だから仕方がない。 「まぁ、それは一理あるかも。だって、瑞穂のとこ、レスじゃないでしょ?」 「レス?」 「セックスレス!うちはもうここ半年、お互いに触れてもないし。もう女として枯れてく一方よ」 翔子が自分を憐れむよう、大袈裟に首を振る。 「てか、なんで瑞穂がセックスレスじゃないって分かるわけ?」 「だって見てみなさいよ。化粧のノリが違う。どうせ昨日、ヤッたんでしょ?」 「ちょっと、やめてよ!」 恥ずかしくて、思わず席を立った。 図星だったから、なにも言い返せない。 そんな私を、2人がまたからかって笑っている。 そう、私たちはセックスレスとは無縁だ。 結婚して1年たらずでレスになってしまうなんて、信じられない。体に触れ合うスキンシップは、夫婦の愛情を確かめる上で必要不可欠じゃないか? 結婚してからも、私と文也は週に一度は必ず愛し合っていた。 そろそろ子どもも欲しいし、それ以前に互いを欲する気持ちが強い。 私は、夫のことを愛している。 信じるも疑うもなにも、心の底から愛していたんだ。 「じゃ、もし文也さんが不倫してたらどうする?」 なぜだか、今日の久美はしつこかった。
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