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「えっ、不倫?文也はそんなこと──」
「だーかーらー!もしもの話。愛しの旦那さまが裏切って不倫してたら?」
もし、文也が私を裏切って『不倫』をしていたら?
変な沈黙がリビングに広がっていく。
「だから、文也さんに限ってそんなことないって」
助け舟を出してくれた翔子に感謝しつつ、チーズケーキを持ってテーブルに戻る。
「それより、翔子もどうして平気なの?旦那に浮気されてるのに」
「それは…」
「あっ、不倫し返してるんじゃない?翔子の化粧ノリだっていいじゃん!あっ、絶対そうだ。2人とも浮気されたら、し返せばいいんだもんね!」
能天気に笑う久美の言葉が、どうしても聞き流せない。
2人とも、私の『家の事情』も知ってるんだ。
私がいかに不倫が嫌いで許せなく思っているのか、よく分かっているはず。
それなのにそんな無神経なこと言うなんて…。
「私はしないから」
すでに次の話題に移っていたのに、どうしても我慢ができなかった。
「私は、不倫なんて絶対にしない」
「瑞穂…」と、翔子が気遣う声を出す。
「私は不倫なんてしないし、文也もしない。でももししたら私…」
「もういいから」
「私…」
『なにするか分からない』と続けようと──。
「ただいま!」
「えっ、文也?」
「あぁ、間に合った。午前中で終わったからさ、2人に久しぶりに会いたくて。ほら、お土産のチーズケーキ!瑞穂が食べたいって言ってただろ?」
私たちは顔を見合わせると、一斉に吹き出した。
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