不倫だけは、絶対に

10/13
前へ
/668ページ
次へ
「えっ、不倫?文也はそんなこと──」 「だーかーらー!もしもの話。愛しの旦那さまが裏切って不倫してたら?」 もし、文也が私を裏切って『不倫』をしていたら? 変な沈黙がリビングに広がっていく。 「だから、文也さんに限ってそんなことないって」 助け舟を出してくれた翔子に感謝しつつ、チーズケーキを持ってテーブルに戻る。 「それより、翔子もどうして平気なの?旦那に浮気されてるのに」 「それは…」 「あっ、不倫し返してるんじゃない?翔子の化粧ノリだっていいじゃん!あっ、絶対そうだ。2人とも浮気されたら、し返せばいいんだもんね!」 能天気に笑う久美の言葉が、どうしても聞き流せない。 2人とも、私の『家の事情』も知ってるんだ。 私がいかに不倫が嫌いで許せなく思っているのか、よく分かっているはず。 それなのにそんな無神経なこと言うなんて…。 「私はしないから」 すでに次の話題に移っていたのに、どうしても我慢ができなかった。 「私は、不倫なんて絶対にしない」 「瑞穂…」と、翔子が気遣う声を出す。 「私は不倫なんてしないし、文也もしない。でももししたら私…」 「もういいから」 「私…」 『なにするか分からない』と続けようと──。 「ただいま!」 「えっ、文也?」 「あぁ、間に合った。午前中で終わったからさ、2人に久しぶりに会いたくて。ほら、お土産のチーズケーキ!瑞穂が食べたいって言ってただろ?」 私たちは顔を見合わせると、一斉に吹き出した。
/668ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2281人が本棚に入れています
本棚に追加