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「久美、大丈夫!?」
追いかけると、久美はトイレに駆け込んでいく。
恐らく飲み過ぎたのだと、後からやってきた翔子と文也に説明した。
2人には戻ってもらい、便器に顔を突っ込んで嘔吐している久美の背を撫でる。
でも…お酒が大好きな久美は、やっぱりあまり飲んでいないようだったけど?それか、もともとあまり気分が良くなくて、アルコールを控えていたのだろうか?
「体調、良くないの?」
ようやく吐き気がおさまった久美に、タオルを手渡す。
それで顔を覆い、そのままトイレに座り込んだ久美は、膝の間に頭を入れるように項垂れている。
「しばらく横になる?」
「…いい」
「お水でも持ってこようか?」
「…いいっ」
タオルの隙間から、嗚咽が聞こえてきた。
「久美?」
「私っ…妊娠してるの」
それだけ言うと、声を押し殺して泣き始めるではないか。
「妊娠?」
それで、お酒を飲まなかったのか。
それじゃ、具合が悪くなったのも──つわり?
久美からは、彼氏ができたとは聞いていない。
いつもなら、真っ先に報告するのに…?
「ご、ごめん」
「えっ?」
「ごめんね」
そう言って再びタオルに顔を埋めると、今度は肩を揺らして泣き出した。
一体、どういうことだろう?
久美が妊娠して、私に謝る理由は…なんなの?
呪文のように「ごめん」と繰り返す久美に、私は恐る恐る尋ねる。
「なんで、私に謝るの?」
「だって…」
「ねぇ、どうして?」
「だって、だって!」
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