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「京子さんの誕生日会?」
「そう、瑞穂さんにも是非って」
奈緒がどこか縋るような目で、私の顔を覗き込む。
私が断ると分かっているのだ。
「こないだ、ホントにごめんね。嫌な思いさせちゃって」
「別に奈緒さんが謝ることじゃないけど…」
「ちょっとセレブの人たちは変わってるっていうか独創的っていうか、私たちとは考え方が違うよね」
おどけて笑う奈緒を見て、改めてホッとする。
この親しげな隣人は、あちら側の住人じゃない。
私と同じ、不倫は良くないという真っ当な考え方の持ち主だ。
「はい、ダージリンティー」
今日は、奈緒の家に招かれていた。
うちと同じ間取りの部屋を見回すと、あちこちにブランド品が転がっている。
「旦那さんまだ出張なの?」
「えっ、あっ、そうそう。いないほうが気が楽だけど」
そう言って笑ったあと、ふと真顔になった。
「旦那がほとんど家に居ないから、暇なんだよね。京子さん、色んなパーティやってるからいい暇つぶしなのよ」
「でも私、やっぱりあの人たちとは付き合いしたくないな」
「気持ちは分かるけど、一回だけどう?嫌なら帰ればいいし」
「うん…」
きっと、奈緒は寂しいのだろう。
あんな人たちともご近所付き合いをするほどに。
そして恐らく、京子から私を連れてくるように言われている…。
「分かった、参加する」
気乗りしないが、奈緒の顔を立てて誕生日パーティに出ることにした。
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