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とてつもなく大きな扉が、目に前にそびえ立っている。
この向こうに、なにが待ち受けているのか?というくらい豪華で重厚な扉だ。
「はい、これ」と、京子が何かを差し出した。
「えっ、これって…?」
「あなたには特別に、私がつけてあげるわ」
そう言うと、拒否するひまもなく後ろに回り込み、私の目元を覆い隠す。
それは、舞踏会でするような羽のついたマスクだ。
「これで今から、あなたは別の自分なの」
「や、やっぱり私…」
奈緒に助けを求めたが、いつの間にかラメの入った羽マスクをしている。
逃げようとする私の背を、京子がそっと押し──。
「自分の欲望を解放するのよ」
耳元で囁かれ、金色の扉がゆっくりと開かれた。
──な、なにこれっ。
そこには、私と同じように舞踏会のマスクをした男女が大勢いて、すぐに値踏みするような粘っこい視線が絡みつく。
こういう、仮想パーティーなのか?
固唾を飲む私は、奈緒からシャンパングラスを渡される。
京子が優雅に中央に歩み出ると、マスクをしたタキシード姿の男たちにエスコートされ、高台に上がった。
このマンションの最上階と同じように、私たちを見下ろしては微笑む。
「今日は皆さん、私のためにありがとう。忘れられない特別な日に──乾杯」
『乾杯』と一斉にグラスが鳴った。
そして京子が、近くにいた男にキスをしたんだ…。
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