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ぐわん、と視界が歪む。
奈緒は、ここが何か、何をする目的なのかを知っていたんだ。
知ってて、私のことを誘ったんじゃ?
その時、奈緒の潤んだ瞳が私を捉える。
なんとも切なげで、それでいて意地悪く微笑むような顔。
ハッとして部屋から後退ると、背中をガシッと押さえつけられた。
「俺たちと遊ばない?」
俺…たち?
恐る恐る振り返ると、マスクをした男が3人いる。
どの目も妖しい光を放っていて、体がすくみ上がってしまう。
こんなこと、あり得ない。
私は夫だけを、文也だけを愛しているのに!
「もっと肩の力を抜いて。どうせ旦那に満足させてもらってないんだろ?」
「放っておいて!」
男たちの手を振り払おうとしたが、ぐいっと手を引っ張られた。
「は、離してっ!」
「こっちだ!」
「えっ?」
手を引かれるまま、わけもわからずどこかの部屋に飛び込んだ。
「しばらくここに隠れていれば大丈夫」
見知らぬ男は、やっぱり目元が隠れていて妖しく見える。
「誕生日パーティーに呼ばれたのに、まさかこんな趣向だったとは驚いたよ」
男はスーツにネクタイを絞めていて、そこだけ見ればセールスマンだ。
もしかしたら、まともな人なのかもしれない。
「私も…なにも知らなくて」
とりあえず危機を脱したと思った途端、目眩がして、フラついた。
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