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「ほら、肩の力を抜いて」
両肩を掴まれ、そのままベッドに押し倒されてしまった。
抵抗したいのに、力が入らない!
覆い被さってくる男から、懸命に顔を背ける。
この男も、これが目的だったんだ!
助けた振りをして近づき、油断させて襲いかかってくる魂胆なんだ。
アテンドがどうとか言っていたけど、こいつも人妻を弄びたいだけ。
「処女でもないんだからさ」
「嫌っ…」
両手を押さえつけられ、身動きが取れない。
男が私の首元に顔を埋め、その荒い鼻息に身の毛がよだつ。
私はこんなこと、望んでいない。
私は『人の妻』なんだ。
夫だけを愛し、夫の居心地のいい家庭を築き、夫と生涯を共にする。
他には何もいらないし、特別なものはなくていい。
それなのに、こんな見当違いの仕打ちを受けるなんて…。
恐怖と悔しさと申し訳なさが混ざり合って、涙が溢れてくる。
私は不倫なんて、絶対にしたくないのに!
「ううっ…」
ただただ、文也に申し訳なくて。
「やっとおとなしくなったな」
そう言って男が手を離し、私の胸を揉みしだく。
その瞬間、スマホを探り当てた私は、男のこめかみを思い切り殴りつけた。
「がっ…!」
うめき声を背に、部屋を飛び出す。
しかしすぐ、前のめりに転んでしまう。
足に力が入らず、うまく立てない!
だ、誰か助けてっ!
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