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ここはオークションだ。
競りにかけられるのは『人妻』で、俺たちが商品を
吟味して落としていく様は、需要と供給が合致している優良な市場でもある。
互いが望んでいるのは、束の間の情事。
決して家庭では味わえない、ほんのいっときのスリルを楽しむために、今日だけはマスクをして自我を解き放つ。
早速、俺の体に遠慮なく擦り寄ってくる、人妻たち。
後腐れなく、名前も知らない人妻と肌を重ねよう。
シナをつくる女たちを選り好みしていると、誰かの叫び声が聞こえた。
出入り口でごねているらしいが、ここからじゃよく見えない。
どうやら、こんなパーティーだとは思わなかったようだ。
なにを今さら、往生際が悪い。
こんなケバいマスクをしている時点で、そのつもりだったくせに。
ここにきて、いい子ぶるなんて。
せっかくの場が、白けてしまうだろう。
場違いな騒ぎには目も向けず、肉付きのいい人妻に決めた。
一度きりなら、セックスの匂いが強い女がいい。
手を引いて奥の個室に向かう。
手近なドアを開くと、中で誰かがせめぎ合っていた。
あれは──?
確か、瑞穂と仲がいい主婦友じゃなかったか?
それも、男が何人も体に群がっていて、本人は恍惚な表情を浮かべている。
瑞穂が知ったら、間違いなく卒倒するだろうな。
その時、誰かが走ってくる気配がしたので、俺は急いでその場を離れた。
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