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すぐにキッチンに戻り、炊き立てのご飯を茶碗によそう。
焼き鮭に納豆、だし巻き卵にぬか漬けのキュウリ。
そこには、完璧な朝食が並んでいた。
ただし、並んでいるのはそれだけじゃない…。
最も異彩を放っている『もの』が、涼しい顔で味噌汁を啜っている。
顔を洗った文也が隣の席につくと「おはよう」と言って、義理の母が箸を置く。
「瑞穂(みずほ)さん、お味噌…変えたかしら?」
姑である節子とは、こうして一緒に食卓を囲む。
まだ同居をし始めて3ヶ月にも満たないが、ようやくあしらい方が分かってきた。
「さすがお義母さん、分かります?」
「えぇ、少し味が薄くなったわね?」
「文也さんの健康診断の結果で、減塩を多めにしたんです」
「…そう」
再び、姑が箸を持つ。
どうやら、うまくいったようだ。
決して否定せず、まずは姑を持ち上げること。
これが私が学んだ、嫁姑がうまくいくコツである。
広いダイニングに夫婦が並び、その上の世代である姑が向かいに控え、もう一つ空いている席にはやがて、私たちの子どもが座るだろう。
その子は初孫となり、姑との潤滑油になるはず。
夫婦はお互いを愛し合い、温かい思いやりに溢れた家庭。
そこには、決して嘘偽りがあってはならない。
それが、私が小さい頃から思い描く『理想の家族』だ。
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