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最後に田舎まで送って欲しいという綾香の願いを、聞き入れる。
車で1時間もかからない。
その間、色んな思い出話をした。
これで会うのが最後だなんて信じられないくらいだ。
何度となく俺を脅し、妻の座に這いあがろうとした女はもういない。そう思うと、子どもを流産させたことも申し訳なく思えてくる。
「私、お見合いしようかなって」
「そうか…綾香は幸せにならないとな」
いざ別れるとなると、なんだか感傷に浸ってしまう。
「私は、あなたの幸せを心から願ってるわ」なんて言われると、つい抱きしめたくなってくる。最後のハグくらいいいだろうか?それとも、このまま最後にもう一度だけ…?
そうだ、なにも永遠の別れじゃない。
綾香が見合いで結婚する頃には、瑞穂が出産する。
ちょうどその頃なら、監視の目も緩んでいるはずだ。
どうせ未だに瑞穂は俺を拒絶しているし、このままじゃ欲求不満でどうにかなりそうになる。夫の愛情を受け入れるのも、妻の役目じゃないのか?
今は色んな手前、性欲すら抑え込んで良い夫をアピっているが、このまま瑞穂が拒否し続けるなら、また『不倫』を再開するのも仕方がないだろう。
それなら、この慣れ親しんだ綾香でいい。
綾香も既婚者になれば、俺を脅かすこともないし。
そうだ、不倫をしよう!
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