瞼で返事をするまで

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うそっ…。 そんな、死んだなんて。 それじゃ、篠田くんは? 「あの、いつ亡くなったんですか?」 私は病院の窓口で、篠田芳恵が亡くなった時期を尋ねる。 それはちょうど、裕太からメッセージが来る少し前だった。 自殺未遂をした妻を世話をしたが、その甲斐もなく亡くなってしまった。裕太を縛りつけるものがなくなったから、晴れて私に連絡をしてきたに違いない。 私がずっと裕太のことを待っていると信じて…。 いや、行くつもりだった。 家には帰ったが、私は元から文也とやり直すつもりはないんだ。 姑が痴呆症になり、責任を感じたから家に留まって介護をしていた。裕太からの連絡を待ちながら。 それなのに──私は妊娠した。 文也との子だ。 それを知ったとき、海を目の前にして足を進めることができなかった。この子のことまで、裕太に背負わせるわけにはいかないからと…。 きっと、裕太は待っていただろう。 そしてやってこなかった私に、絶望した。 だから電話も繋がらないし、家も引き払われている。 今さら私も、裕太の行方を追っても仕方がないことは分かっているけど…どうしても気になったんだ。 このまま子どもを産んで、また文也と家族としてやり直すことが果たして正解なのか分からず、裕太と話がしてみたかった。 でももうそれは、2度と叶わない。
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