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「でも文也さん、モテるでしょ?」
ワインをちびちびと舌先で舐めている久美は、頬を赤らめている。
「確かにイケメンだよね。瑞穂にはもったいない!」
早くも酔ったのか、翔子が豪快に笑う。
ズケズケと物を言うけど、裏表がないのがこの友人の魅力だ。
女同士のやっかみには「そうかなぁ?」と当たり障りなく返すが、心の中では満更でもなかった。
文也はハイスペックで、入院してきた当初は大勢の看護師たちが狙っていて、たまたま担当した私への嫉妬は凄まじく…思い出すだけでも鳥肌が立つ。
ただハンサムというだけでなく、その物腰は柔らかいし、付き合った当初から『マメ』だ。
それが結婚しても変わらないというのが、文也の人間性を表していた。
よく、結婚したら手のひらを返すように豹変する夫話を耳にする。
けれど、文也に限ってそれはない。
逆に、妻の私が忘れてしまっている、2人だけの特別な記念日を祝ってくれたりと、愛情はなにも変わらないんだ。
思わずにやけていたのだろう。
「いいなぁ、幸せそうで」
そう言って、久美が大きなため息をつく。
「今日は居ないんだっけ?土曜日なのに」
翔子の問いかけに「仕事が忙しいみたい」と答える。
すると、なにか考え込んでいた久美が──。
「それって、浮気だったりして?」
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