星のお菓子

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「あんた、成仏しなさい!」 戦争が終わって初めての正月が終わり、桜の蕾が綻び始めた頃、母の大きな声で私は宿題を放り投げて玄関へ行った。 そこには兵隊服に大きなリュックを背負った父が立っていた。 「何を言ってるんだ?足ならあるぞ?」 翻訳家で通訳として動員された父はそう言ってぴょんぴょんと飛び跳ねて見せた。 「えっ?俺……死んだことになってるの?」 戦死広報が届き、遺骨代わりの石ころをお迎えに行った事を母から聞かされた父はすっかり贅肉の落ちたお腹をいつもの様にさすりながら笑った。 「あっ、良子ただいま。」 父は私を見つけるとポケットから封筒を取り出すと、私の掌の上に沢山の星のお菓子を置いた。 「良子が好きだろうと思って、復員直前に上海で買ってね、持ってきたんだ。」 溢れんばかりの色とりどりの星のお菓子はまるでモザイク画の様に私の掌の上に転がっていた。 「お帰りなさい……。」 母の言葉に父は頷くと私と母の二人を抱きかかえた。 戦後の混乱期、父と母の苦労はしばらく続いたが、私たち家族は平和なひと時を楽しんでいた。 母の言った通り日本には気持ちを強く持った人達が一杯いたようだ、日本は復興して繁栄を続けている。 私が願うのはこの平和が少しでも長く続くようにという事だ。 来週も孫夫婦がひ孫を連れて遊びに来る……こんな細やかな幸せがいつまでも続くことを願って……。 そうそう、ひ孫たちの為に星のお菓子を用意しておかなくっちゃね。 ー 終 ー
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