距離

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距離

僕は中学生になった。 お母さんは昔のように僕の匂いを嗅がなくなった… と思っていたのだけど… すぅぅぅぅーーーー…… 「はぁ…さすがに変わったなぁ…でも…大好きなあなたの匂いだわ。元気出る。でかくなったから…こんなことされたら嫌かもしれないけどさ。私からしたらまだまだがきんちょだわ…」 そう。 俺が寝てる時にそっと匂いを嗅いでるのを知っている。 いや本当にちょっとやめてほしいと思う。 でも、そんなこと言えない。 だってお母さん本当に苦労してるみたいで…時々本当に顔がげっそりとしてたり、力がなかったりする。 力で言えば僕の方が強くなったくらいだ。 僕は中学3年にもなると身長がぐんっと伸び、とうとうお母さんの身長を超えた。 お母さんがどんどん小さく見える。 でも、僕のために必死に頑張ってくれてる姿は誰よりも力強くかっこよかった。 僕は体はでかくてもまだまだお母さんの言うようにがきんちょ。 だから、詳しいことなんか分からない。 それでも隠しきれていない疲れとかが滲み出ていた。 だから、中学生になってもお母さんの好きなようにさせている。 唯一お母さんが元気の出るおまじないみたいなものだと思うから。 僕も忙しい。 中学生2年までは部活で帰りも遅かったし、中学3年は怒涛の受験勉強。 お母さんとの距離はどんどん離れていってる気がしたけど、縮まった分お母さんがこうやって距離を詰めてくる。 僕が離れても、お母さんはお母さんなんだなと気付かされる。 色々ご飯作ってくれたり、部活だってサポートしてくれたり… 影で物凄く支えてくれているのを感じる。 だから… 「お母さんいつもありがとう。感謝してる。これからもよろしくお願いします」 中学卒業式。 初めて心の底から感謝を伝えた。 「何だよ。照れくさいなぁ!卒業おめでと!こんなにでかくなっちゃって!これからも頑張りなよ!」 僕も照れくさかった。 でもお母さんの笑顔を見て「僕は本当に幸せ者だな」と思わずにはいれない。 「たまにさぁー匂い昔みたいにかがせろよー。つか、もう抱きしめたりとかもないじゃん」 「いや?さすがにもうやめてよ。恥ずかしいわ!」 そんなくだらない会話をしながら帰路に着く。 こんな生活もあと少し…
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