成長

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成長

ってあの頃は思っていたな。 僕はどんどん成長していった。 逆に成長と共にお母さんとの距離もどんどん遠くなっていった。 あの頃のようにたくさん抱きしめられることは減った…と思う。 というか、恥ずかしくてお母さんから来ても僕が避けている。 反抗期という反抗期は特になかったと思うけど、やっぱり母親に抱きしめられるのは恥ずかしい。 「ぎゅー!!」 ほら。 僕を見かければ抱きしめようとする。 すぅーーーーーー。 そしてまた匂いを嗅ぐんだ。 「ねぇお母さん…僕今宿題してる。そしてちょっと重い。というか、離れて。 僕の匂いかがないで!恥ずかしいってば!」 徐々に僕の声が大きくなる。 冷静に離れてと言ってもこれが中々離れないのがお母さん。 つい最後は強い口調になってしまう。 「やっぱりいい匂い!でも、やっぱ成長感じるなぁ。 かすかに赤ちゃんの時と同じ匂いってかあんたの匂いするけど、汗臭さが混じっててちょっと臭い」 「なら嗅ぐなよ!」 わざわざ僕の顔を両手で包んで向きを変えてまで匂いを嗅いといて失礼だ。 さすがに嫌だったのでお母さんの胸を両腕で押しのけて目を見つめる。 お母さんの目はとても暖かい目をしていた。 分かっているんだ。 僕のこと大切に思ってくれてるんだって。 でも、ついつい突き放すようなことを言ってしまうんだ。 「お母さん!本当恥ずかしいからやめて!もう僕赤ちゃんじゃないんだよ!?やめてよ!」 「えーいいじゃーん。ママの元気の源なんだから!」 「ママはやめて!何もかもが恥ずかしい!」 「冷たいなぁ」 なんて会話をしていてもお母さんは本当に楽しそうで… 僕は学校、お母さんは仕事ですれ違うことが多くてもこういうちょっとした時間をお母さんは大切にしてるんだよなぁ。 なんで僕は大切に出来ないかな? 色々心の中で思っているとお母さんは「まっいいや!元気でたし!頑張ろ!あとでおやつ一緒にたべよーぜ!」と言いながら僕から離れた。 僕の返事も待たずに忙しそうにまた動き回るお母さん。 それを僕は宿題をしながら眺めていた。
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