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時は流れ
時は止まらない。
時間はどんどん過ぎていく。
仕事も安定して、彼女とも上手くいって…
ごくごく普通の生活とはこういうことを言うのかもしれない。
母と彼女との距離はどんどん縮まり、俺のいないところで会っているようだ。
一緒に住むという話も進んではいるが、中々母が頷いてくれない。
頑固だ。
彼女とも結婚を決め、話もした。
住まいも母の為にと2人で色々考えた。
彼女との結婚。
母との同居。
家の引越し。
目まぐるしく毎日が過ぎていく。
そんな中新しい家族も増える。
予定。
そう。
嫁が妊娠したのだ。
俺は直ぐに仕事を辞めるように言った。
本人は大丈夫と言ったが、俺が大丈夫じゃない。
心配だ。
母もそこは俺と同じ意見だったようで「金ならどうにでもなんのよ。あんたが体を壊したら元も子も無いでしょうが!私がいるんだ。安心しな。あんたら2人養うくらいどうってことないわ !」
俺の立場をぶんどるかのように格好よく言い放った。
嫁は強気の母に憧れている。
羨望の眼差しで母を見、あんなに退職を渋っていたのにすぐに辞めた。
これで一安心だ。
が、俺は今まで以上に頑張らなければならない。
家族を守るためにできるだけ仕事も家事も頑張る。
この幸せを…笑顔を守り抜くためなら頑張れる。
そんなこんなで仕事に家事にと忙しい日々はあっという間に過ぎ…
尊い命が誕生した。
命がこの世に誕生した瞬間の産声はずっと忘れられないだろう。
強気のあの母がみんなの前で涙したのだ。
孫の小さな小さな手を握る母の手は嬉しさで震えていた。
「ありがとう…ありがとう…」
ボロボロに泣きながら母は嫁に感謝していた。
俺も嫁も涙する。
みんなで泣いた。
嬉しい涙。
幸せの涙。
これほどまでみんなで泣いたことは後にも先にもこれが最後なのかもしれない。
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