グレープフルーツ・ブーム

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 アレックスがたしなめるも、ジュニアは画面を見つめたまま指を止めずに答えるだけだった。そして、寂しそうな声色で続けた。 「でもやっぱり、愛するグレープの需要が失われているのに、呑気にワインを飲む気にはなれないんだよ」 「それはたしかに、そうだが……」  父は思わず返す言葉に詰まった。  近年、世界中でグレープの需要が落ち込んだのは紛れもない事実だ。世界有数の生産地、ここカリフォルニアでグレープ農園を営む立場としては耳が痛い。 「そうはいっても、日本みたいに需要に変化のない国もあるじゃないか。気を張り詰めすぎるのもよくない。お前はあと数分で成人となる誕生日を迎えるのだ。ワインが飲めるようになる日を、私もお前も、幼いころから待ち焦がれていただろう」  なおも食い下がると、ジュニアがピタッと指を止めて、画面からアレックスに視線を移した。鋭く冷たい目つきはバーのアイスピックに似ている。
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