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~序~ アヤカシとヒト
――妖(アヤカシ)とは。
人々に恐怖と厄災をもたらす霊的存在。
もしくは怪異だ。
彼等は千差万別の姿と能力がある。
人の姿を取るモノもいれば、動物の姿を取るモノもいる。例外も存在するが、その中には、人間の血を啜り、肉を食み、骨を砕く、忌まわしき堕ちたモノもいた。
――沙羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらわす。
栄華を極めている者も必ず衰えるときがくるという意味だ。
無常の世はどんどん移り変わる。
文明開化。戦争。
新たな光を求める歴史は、豊かな自然を破壊し、同時に妖が好んだ闇をも奪い去った。……跋扈する彼等を身近な隣人のように感じつつも、恐れ、敬いながら生きた人間達もやがて散ってゆく。
――ところが、ここで完全に消滅したと思い込んではいけない。
現代になっても、現世に紛れ、陰の中で生きる妖(アヤカシ)達がいた。
そして、もう一つ。
彼等と同じ道を辿った唯一無二の存在がいる。
人ならざる悪意ある者を封じ、または滅ぼせるのが“陰陽師”。
歴史が変わる前にひっそりと姿を暗ました「緋凰家」と「狗御家」は、血筋を絶やしていなかった。「緋凰家」の力を受け継ぐ少女は鬼姫を相手に奮闘する中で、「狗御家」の秘密を知る。
闇に溶けるような漆黒の髪と、瞳。
氷のように冷たい眼差し。
「狗御家」は陰陽師ながらも、「鬼の血」を潜在的に受け継ぐ特殊な家系だった。
美しい少年は、その血を濃く受け継いで生まれたが故に……悲しい過去を抱えていた。
少年少女はどのように物語を紡ぐのか。
さあ。
ほんのひと握りの者にしか知らないお話が始まる――。
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